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風上前進離岸法

今回はヨットの離岸方法について勉強したいと思います。

私たちヨットマンにとって、沖合での風位によるヨットの動かし方、すなわちセーリングの技術習得は必須ですが、それに加えて桟橋又は岸壁でのヨットの離岸および着岸が如何にスムーズに行えるかに最大の神経を使います。

 

特に桟橋又は岸壁からの離岸の場合、風下方向に離岸するのか、風上方向に離岸するのかで離岸方法が異なります。風下方向に離岸する場合は、ヨットは前後のもやい(ライン)を外せば、風の力で船体が桟橋又は岸壁から離れるので離岸は比較的簡単ですが、風上方向に離岸する場合は、もやい(ライン)を外しても、風の力でヨットは桟橋又は岸壁に押し付けられているため、離岸が難しいのです。

下図を参照しながら、「風上前進離岸法」をマスターしましょう!

 風方向は沖側から(アビーム~前方の場合)です。〈FIG-1参照〉

※バウスプリングの取付け方は、スターンスプリングの取付け方と違い、FIG-5の様に「バイトに取る」。すなわち、1本のバウスプリングの一端を艇側に固定し、他端を岸壁側の係船金具に通してから艇側に戻し固定する。〈FIG-5参照〉これを「バイトに取る」または「行って来いに取る」と言います。

艇側のバウスプリングの一端を外して、艇側の他端を船内に引き込めば、クルーは岸壁に降りることなく、バウスプリングを船内に回収できます。

これが「風上前進離岸法」の肝となります。

以下「風上前進離岸法」の手順を解説します。

      フェンダーをバウの岸壁側に2本追加する。〈FIG-1参照〉

      風下側のスターンスプリング・スターンラインを岸壁側係船金具から外し、船内に回収する。〈FIG-2参照〉

      ギヤーを前進低速に入れる。

      風上側バウラインを岸壁側係船金具から外し、船内に回収する。

      岸壁側作業のクルーは乗船する。

      ティラーを風上(左旋回)に切る。〈FIG-3参照〉

      ゆっくりとスターンが岸壁からはなれはじめる。〈FIG-3参照〉

      ギヤーを後進低速に入れる。〈FIG-4参照〉

      艇はゆっくりと後進しはじめる。FIG-4参照〉

      ティラーを中央に戻す。〈FIG-4参照〉

      艇の後進により、バイトに取っていたバウスプリングに負荷が無くなった時、スプリングの艇側の一端を外し、岸壁側係船金具を通過して船内に回収する。〈FIG-4参照〉

      そのまま余裕のあるスペースまで後進を続ける。

 参考資料:Inner Sailing①青木洋著